題目:タイヤバースト発生時の四輪車両走行に対する非線形モデル予測制御
研究目的:自動車の路上故障件数に関する統計において,最も多い故障原因はタイヤのバーストであることが報告されている.走行中にタイヤがバーストすると,車両の挙動に急激な変化が生じて,操作性と走行安定性が著しく低下することが確認されている.このような背景から,走行中にタイヤのバーストが発生し,車両の制御性能が低下した場合の走行制御に関する研究が注目されている.先行研究では,タイヤの横すべりや荷重移動などの非線形要素を含む四輪車両のシステムモデルに対して,最適フィードバック制御手法の一つである非線形モデル予測制御(NMPC: Nonlinear Model Predictive Control)に基づく制御手法が提案され,その有効性が確認されている.そこで本研究では,タイヤのバースト発生時における横すべりを考慮した四輪車両の非線形システムモデルに対して,NMPCに基づく制御系設計法を考案し,数値シミュレーションによりその有効性を確認することを目的とする.
題目:Fine-tuningを用いた畳み込みニューラルネットワークによる路面電車の前方画像からの障害物検知
研究目的:近年,路面電車は都市部における道路交通の緩和や高齢化社会に対応できる都市交通システムとして再評価されている.また,LRV(Light Rail Vehicle)と呼ばれる次世代型路面電車の導入が進められている.一方で,路面電車は安全性の確保において,運転士の状況判断に依存している現状が課題とされている.令和5年度の路面電車における運転事故のうち,道路障害事故は全体の58.3%にあたる.道路障害事故を減らすため,新たな事故防止対策が求められている.そこで,カメラで路面電車前方を撮影した画像から自動車や歩行者などの障害物を検知する研究が注目されている.先行研究では,Sobel operatorを用いたエッジ検出手法によって,路面電車前方の静止画像から障害物を検知する手法が提案されている.一方,近年の画像認識分野では,畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)と呼ばれる深層学習(Deep Learning)手法が高い認識性能と識別精度を発揮することが知られている.さらに,他の先行研究では,踏切内の障害物検知において,Fine-tuningを用いたCNNに基づく画像認識手法を提案されており,その有効性が確認されている.以上の背景から,本研究では,Fine-tuningを用いたCNNに基づく路面電車前方の障害物検知手法を提案し,識別精度を確認することを目的とする.
題目:未知外乱下におけるロータ1枚が停止したクワッドコプタに対する適応モデル予測制御
研究目的:近年,クワッドコプタの活用分野が急速に拡大している.しかし,その一方で,クワッドコプタによる衝突事故や追落事故の増加が問題視されている.これらの事故の主な原因として,ロータの故障や操縦ミスが挙げられる.このような事故を抑制するために,クワッドコプタの自動制御に関する研究が進められている.先行研究では,ロータ1枚が停止した場合を想定したクワッドコプタに対して,非線形モデル予測制御を用いた制御手法が提案されている.しかし,先行研究の提案手法の場合,気流による外乱が発生した際に制御性能の低下が懸念される.一方,他の先行研究では,ロータの故障なしという仮定のもと,外乱を考慮したクワッドコプタの自動制御問題に対して,適応モデル予測制御を用いた制御手法が提案され,その有効性が確認されている.本研究では,ロータ1枚が停止した未知外乱下におけるクワッドコプタの自動制御問題に対して,適応モデル予測制御を用いた制御手法を考案する.また,数値シミュレーションにより,その有効性を確認することを目的とする.
題目:MFCCの画像化による特徴量抽出に基づくCNNを用いた術後せん妄疑似体験者の感情推定
研究目的:近年,看護教育の分野では,術後せん妄の患者に対する看護師の態度の改善を目的として,看護学生を対象にVR映像を用いた術後せん妄の疑似体験が行われている.そして,術後せん妄に対する意識の変化を調査するため,インタビュー形式の意識調査が実施されている.特に,インタビュー音声から感情を推定することで,看護学生が患者に対して抱く感情の変化を客観的に評価し,自らの感情を認識および改善するためのフィードバックを提供することが試みられている.これにより,患者に寄り添う態度を育成し,患者への対応能力の向上に寄与することが期待される.先行研究では,国立情報研究所で公開されている感情評定値付きオンラインゲーム音声チャットコーパス(OGVC)の音声データを用いてLSTM(Long Short-term Memory)により識別器を構築し,この識別器を用いて術後せん妄の疑似体験のインタビュー音声を識別し感情の評価が行われている.また,OGVCおよびインタビュー音声においてメル周波数ケプストラム係数(MFCC:Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)と呼ばれる特徴量が抽出されている.一方で,OGVCにおける識別精度の向上が課題として挙げられている.他の先行研究では,OGVCから抽出したMFCCを画像化し,Finetuningに基づくCNN(Convolutional Neural Network)を用いて識別を行うことで,先行研究より識別精度が向上するという結果が確認されている.そこで,本研究では,先行研究で用いたインタビュー音声より抽出されたMFCCを画像化し,CNNを用いて感情推定を行うことで,先行研究の推定結果と比較を行うことを目的とする.
題目:4自由度の油圧ショベルの制御系設計における状態推定
研究目的:近年の建設業界は深刻な労働者不足に陥っている.その解決策として油圧ショベルなどの建設機械の自動化が進められている.しかし,センサの故障により油圧ショベルの状態を正確に観測できないことによって,制御性能の劣化や事故の要因等の懸念が生じる.センサが故障した場合の解決手法として,カルマンフィルタを適用した状態推定オブザーバに基づく推定手法が有効であることが知られている.先行研究では,一部の状態が観測されないクアッドコプタを想定し,状態を推定する手法としてUKF (Unscented Kalman Filter)を用いた状態推定オブザーバが提案され,その有効性が確認されている.そこで,本研究では,一部の状態が観測されない油圧ショベル制御系に対して,UKFに基づく状態推定法を考案し,数値シミュレーションにより提案手法の有効性を確認することを目的とする.
題目:Fine-tuningに基づく畳み込みニューラルネットワークを用いた画像認識による異常葉の識別
研究目的:近年,農業分野において病害植物による農作物の生産性および品質の低下が深刻な問題となっている.また,病害植物の防除のために農薬を使用することによる環境負担の増加も問題として挙げられる.そのため,病害植物の被害拡大を防ぐため,画像認識技術を活用して異常葉を検知し,病害植物を早期に発見する研究が進められている.先行研究では,画像から赤・緑・青の三原色で色を表現するRGB (Red Green Blue)成分と,色相・彩度・明度で表現するHSV (Hue Saturation Value)成分を特徴量として抽出し,サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)を用いた画像認識により異常葉を検知する手法が提案されている.しかし,先行研究では,色情報以外の特徴量が考慮されておらず,識別精度のさらなる向上が課題として挙げられている.一方,他の先行研究では,人間の開・閉眼の識別に対して画像認識が行われている.この研究では,Fine-tuningと呼ばれる転移学習に基づく畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network)を用いた画像認識手法が提案されており,この手法を用いることで色情報以外の特徴量を考慮することが可能である.そこで,本研究では,病害植物における正常葉と異常葉の画像に対して,Fine-tuningに基づくCNNを用いた画像認識を行うことで,識別精度を向上させることを目的とする.
題目:劣駆動船舶の横揺れを考慮した非線形モデル予測制御による軌道追従
研究目的:船舶の海難事故の事例として,人的ミスによる転覆が挙げられる.そこで,人的ミスによる事故を減少させるため,船舶の自動運航技術が注目されている.そして,転覆の要因として,船舶の横揺れが挙げられる.乗客人数や荷物の積載の仕方により,船舶の復原力が小さくなり,転覆の可能性が高くなる.また,激しい横揺れは,乗員や乗客に船酔いを起こすことも知られている.先行研究では,劣駆動船舶に対して,非線形モデル予測制御(NMPC: Nonlinear Model Predictive Control)に基づく制御系設計法が提案され,その有効性が確認されている.他の先行研究では,横揺れを考慮した船舶に対して,船舶の減揺制御により横揺れが低減され,その有効性が確認されている.そこで,本研究では,横揺れを考慮した劣駆動船舶の非線形システムモデルに対して,NMPCに基づく制御系設計法を考案することを目的とする.また,数値シミュレーションによりその有効性を確認することを目的とする.
題目:AI外観検査に用いる学習用データの不足に対するLSGANを用いた生成画像の活用
研究目的:製造業において欠陥検査の手法の一つである外観検査では,カメラによる撮影画像を用いることで外観検査の自動化が期待されている.近年では,ディープラーニングの一種であり,画像認識の分野で広く応用されている畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)を用いた外観検査装置が注目されている.外観検査装置においてCNNを用いる場合,検査対象となる製品の良品と不良品の画像を用意する必要がある.しかし,一般的に,不良品の発生頻度は良品に比べ極端に少ないため,不良品に対する深層学習用の十分な学習データを準備することが困難な場合があると考えられる.また,CNNは学習に用いるデータ数が少ない場合,識別精度が低下することが知られている.先行研究では,深層生成モデルを用いた画像生成AI技術についての研究が報告されている.深層生成モデルの一つである敵対的生成ネットワーク(GAN:Generative Adversarial Network)は高品質の画像を生成することが可能である.特にLSGAN(Least Squares GAN)はGANで指摘されていた生成画像の特徴が偏る問題を改善し,より幅広い特徴を学習できることが報告されている.そこで,本研究ではLSGANを用いて不良品の画像を生成し,識別精度を確認することで,学習用データセットとして生成画像を用いることの有効性を確認することを目的とする.
題目:連結車の軌道追従走行における非線形モデル予測制御
研究目的:近年,各種車両に対して,交通システムの効率化,さらには,運転者の負荷軽減を目的とした自動運転技術への関心が高まっている.その中でも特に,連結車を対象とした自動運転技術は,輸送効率の向上や労働力不足への対応策として注目を集めている.このような背景から,連結車の自動化を実現するための研究が行われており,連結車の高精度な軌道追従制御が重要な課題とされている.先行研究では,連結車両の軌道追従制御問題に対して,非線形モデル予測制御(NMPC: Nonlinear Model Predictive Control)に基づく最適化問題が提案され,その有効性が確認されている.連結車の制御系設計では,カーブや分岐や障害物など周囲の環境が動的に変化する場合においても,目標軌道に沿って走行することが求められる.しかし,先行研究の手法では,動的な環境下での制御性能が低下する可能性が指摘されている.C/GMRES法は,NMPCにおいて実時間で逐次的に最適解を計算することで,動的な環境下でも制御性能を維持するために有効であることが知られている.そこで,本研究では,トラクタ(前方車)とトレーラ(後方車)から構成される連結車の非線形システムモデルに対して,C/GMRES法を用いたNMPCに基づく制御系設計法を提案し,数値シミュレーションによりその有効性を確認することを目的とする.