卒論一覧(2021)

題目:感染拡大抑制を目的とした課税制度設計に対するモデル予測制御の適用

研究目的:近年,新型コロナウィルス感染症が世界中で流行しており,感染症対策への関心が高まっている.個人による,マスクの着用や消毒が感染症対策として普及している中,社会や団体に対しては,ワクチン接種や移動制限が積極的に行われている.感染症対策に関する研究分野では,感染症の数理モデルを利用した研究が注目されている.先行研究では,ワクチン接種による感染拡大の抑制を目的として,感染症の数理モデルに対し,最適制御に基づく制御設計法が提案されている.一方で,都市部の道路渋滞を抑制する手法として,ロードプライシングと呼ばれる課税制度によって高速道路の交通流を最適化する制御設計法が提案されている.ロードプライシングは,海外で導入されている例もあり,課税による移動の抑制は有効な手法と判断できる.以上の背景から,感染症拡大の抑制を目的とした課税制度設計に対する制御系設計法を提案する.本研究では,感染状況から決定される課税制度に対して,最適フィードバック制御の一つであるモデル予測制御を適用し,数値シミュレーションにより,その有効性を確認することを目的とする.

題目:畳み込みニューラルネットワークを用いた特徴量抽出に基づく機械学習による踏切内の障害物検知

研究目的:鉄道における運転事故の件数は,長期的に減少傾向である.令和2年度では,平成元年度以降の運転事故件数が最少になっている.しかしながら,令和2年度における運転事故は483件発生している.なかでも,踏切事故は165件発生しており,運転事故全体の34.2%に当たる.踏切内における事故を減らすため,様々な種類の障害物検知システムが検討されている.近年では,カメラで撮影した画像から障害物を検知する方式が注目されている.先行研究では,ニューラルネットワーク(Neural Network)を用いた機械学習に基づく画像認識による踏切内の障害物検知手法が提案されている.一方で,機械学習の分野では,深層学習(Deep Learning)と呼ばれる手法が多く用いられている.深層学習は,認識に有効な特徴量の抽出処理を自動化することができることが知られている.画像認識においては,畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)と呼ばれる深層学習の手法が,高い性能を達成することが確認されている.本研究では,CNNを用いた特徴量抽出に基づくニューラルネットワークによる踏切内の障害物検知手法を提案し,識別精度を確認することを目的とする.

題目:ウェブサイトのスクリーンショットを用いたレスポンシブデザインに対応したHTMLの自動生成

研究目的:近年,様々な業種でDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれる,デジタル技術を活用した業務改革の取り組みが始まっている.機械系業種もその例外ではなく,工場内において,AIやIoTなどのデジタル技術を活用することで,製造工程の効率化を行う事例がある.一方で,導入費用やIT人材の確保が課題となっている.この課題の対処法として,少量のコードで開発をするノーコード開発や,AIを活用した開発支援ツールなどが活用されている.先行研究ではウェブサイトやAndroid,iOSなどのデザインと対応するDSL(Domain Specific Language)を学習させ,コードを自動生成するという手法が提案されている.しかしながら,先行研究のウェブサイト向けコードの自動生成手法は,固定されたwindowサイズのみを適用可能な対象としており,スマホやタブレット,パソコンなど多様なデバイスに対応したレスポンシブなデザインのHTMLを自動生成できないという問題がある.そこで,本研究では,パソコンとスマートフォンのスクリーンショットを生成器への入力として,レスポンシブなHTMLコードを自動生成する手法を提案する.

題目:非負値行列因子分解を用いた環境雑音下における悲鳴検知の識別精度評価

研究目的:機械学習を用いた音声認識の分野において,悲鳴検知に関する研究が行われている.機械学習とは,コンピュータに大量のデータを学習させ,分類や予測などを遂行するアルゴリズムを構築する技術である.悲鳴検知システムは,防犯カメラを設置することのできないプライバシー空間における,犯罪の早期発見や抑止力としての効果が期待されている.先行研究では,トイレの水の音を環境雑音とした悲鳴検知が行われている.前処理としてバンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)を適用し,サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)による識別を行い,その有効性が確認されている.しかし,先行研究で提案されている手法では,悲鳴に類似した環境雑音がある場合には,識別精度の劣化が懸念される.本研究では,環境雑音として,トイレの水の音やエレベーターの開閉音,チャイムの音,話し声などの雑音がある密室を想定し,環境雑音下における悲鳴検知手法に着目した.本研究では,前処理として,BPFの代わりに非負値行列因子分解(NMF:Non-negative Matrix Factorization)2)を用いた悲鳴検知手法を考案し,その有効性を確認することを目的とする.

題目:航空機の6自由度運動を考慮したモデル予測制御系設計

研究目的:近年における有人航空機の事故の主な原因として,パイロットの操作ミスが挙げられる.そこで,人為的ミスを減少させるために,自動飛行制御技術の開発が注目されている.先行研究1)では,航空機の水平面内誘導制御問題に対して,最適フィードバック制御手法の一つである非線形モデル予測制御(NMPC: Nonlinear Model Predictive Control)に基づく制御手法が提案され,その有効性が確認されている.しかし,先行研究では,機体に発生する揚力と重力が常に釣り合うと仮定されているため,上昇や下降時の揚力が変動する飛行中の機体の運動は考慮されていない.そこで,本研究では機体の上下方向も考慮した6自由度非線形モデルによる航空機のシステムモデルに対してNMPCを考案し,数値シミュレーションによりその有効性を確認することを目的とする.

題目:多種音源の量子化における確率共鳴の性能評価

研究目的:音声認識のようにコンピュータが音声から情報を認識するためには,しばしば信号の量子化が行われる.量子化とはAD変換やネットワーク通信を介した情報伝達などで用いらる.ネットワークの通信情報量が極端に制限された場合,低分解能の量子化を行う必要があり,情報の劣化が懸念される.近年では,人工的にランダムノイズを付加して量子化を行うことにより,量子化誤差の悪影響を低減させる,確率共鳴と呼ばれる現象の応用が手段のひとつとして考えられる.ある信号に適切な強度のノイズを付加することによって,量子化前後の相関関係を最大化させることにより,量子化による情報劣化の悪影響を低減させることができる.確率共鳴の原理を制御工学に応用した研究では,線形システムの量子化状態フィードバック制御系に確率共鳴が適用され,その有効性が確認されている.先行研究では,ある音源に付加するノイズの確率分布を変更したところ,一様分布がより有効であることが確認された.本研究では,音信号の量子化において,複数の音源に一様分布のノイズを付加し,それぞれの確率共鳴の有効性と与える影響について評価することを目的とする.

題目:未知外乱下におけるクワドロータに対する適応モデル予測制御

研究目的:近年,様々な分野でクワドロータの利用が急速に普及している.クワドロータの利用が増加する一方で,その事故の増加が問題視されている.事故の増加を抑制するために,環境整備や運航システムの開発,自動制御に関する研究が進められている.自動制御に関する研究として,クワドロータに対する非線形モデル予測制御(NMPC : Nonlinear Model Predictive Control)が先行研究で提案されている.しかしながら,先行研究では気流の変動によって生じる外乱がないものと仮定されている.そのため,未知外乱が発生している状況下で,先行研究の提案手法を適用すると,制御性能の劣化が懸念される.一方で,航空機の飛行制御に対して外乱の影響を考慮したNMPCが別の先行研究で提案され,その有効性が確認されている.本研究では,未知外乱下におけるクワドロータに対して,先行研究で提案されている適応モデル予測制御手法を適用し,数値シミュレーションにより,その有効性を確認することを目的とする.

題目:耐熱断熱材を用いたカーボン製ドローンの耐熱評価実験

研究目的:近年,害虫対策,宅配サービス,インフラ設備の点検など,様々な場面でのドローンの活用が期待されている.また,災害現場での応用も期待されており,火災現場での活用を想定した研究も行われている.しかし,高温環境下での活用を目的としたドローンの耐熱特性に関して,技術的課題が残されている.このような背景から,先行研究では,火災現場でのドローンの活用法として,消火ドローンに着目した研究が行われている.ドローンに消火用ホースの先端部を取り付け,火災現場に侵入しホース先端を設置するというミッションを達成する第一歩として,火災環境を模擬するための大型加熱炉を用いて,断熱保護を施した樹脂製ドローンの耐熱実験が行われている.先行研究の結果では,断熱保護によりドローンの温度上昇が抑えられることは確認されているが,ドローンのアーム部分の断熱保護が十分でなかったため,飛行時間についての課題が残されている.そこで,本研究では,カーボン製ドローンに対して,本体とアーム部分に断熱保護を施し,耐熱実験を行うことにより,改良されたドローンの耐熱性能を評価することを目的とする.