卒論一覧(2020)

2020年度 卒業研究紹介

題目:縮小写像法に基づく非線形モデル予測制御によるクワドローターの姿勢制御

研究目的:近年,クワドローターの普及が進み,クワドローターの自動制御に関する研究への関心が高まっている.先行研究では,モデル予測制御手法に基づくクワドローターの姿勢制御手法が考案されている.モデル予測制御とは,最適フィードバック制御手法の一つであり,評価区間を移動させながら,時々刻々と継続的に最適制御問題を解きながら最適入力を更新する手法である.先行研究では,非線形モデル予測制御問題に対して,C/GMRESと呼ばれる数値解法が用いられていた.本研究では,C/GMRESより計算の高速化が期待できる縮小写像法(CM: Contraction Mapping)と呼ばれる数値解法を,クワドローターの非線形モデル予測制御による姿勢制御問題に適用し,その有効性を確認することを目的とする.

題目:音信号の量子化における確率共鳴のノイズ種類による性能評価

研究目的:工学分野では,AD変換やネットワーク通信を介した情報伝達などで,しばしば信号の量子化が行われる.ネットワークの通信情報量が極端に制限される場合,低分解能の量子化を行う必要があり,情報の劣化が懸念される.近年,人工的にランダムノイズを付加して量子化を行うことにより,量子化誤差の悪影響を低減させる手法が着目されている.これは確率共鳴と呼ばれる現象のひとつとして考えられる.適切な強度のノイズを付加することによって,ある信号の量子化前後の相関関係を最大化させることにより,量子化による情報劣化の悪影響を軽減させることができる.確率共鳴の原理を制御工学に応用した先行研究では,ノイズを用いた量子化に基づく制御系解析において,一様分布のノイズが適用され,その有効性が確認されている.一方で,確率共鳴の原理を音信号の量子化に適用した先行研究では,ある音信号に対して,一様分布のノイズを付加することで,量子化誤差の悪影響を低減できることが確認されている.本研究では,音信号の量子化に対して,一様分布以外の確率分布のノイズを適用し,その量子化誤差の影響を定量的に評価することを目的とする.

題目:アクチュエータとセンサの故障時における人工衛星の回転運動の安定化

研究目的:近年,人工衛星の打ち上げ目的が多様化する背景のもと,人工衛星の姿勢制御系設計に関する研究の重要性が高まっている.人工衛星は,ロケットによって宇宙空間に打ち上げられた後に,搭載機器が故障した場合,その機器を修理することは極めて困難である.したがって,搭載機器の故障は,人工衛星のミッション遂行の失敗につながる,大きな懸念材料である.ここで,人工衛星の姿勢制御に関する研究に着目すると,近年,人工衛星の3軸姿勢制御方式において,1軸回りの制御トルクがアクチュエータの故障等の原因により用いることができない状況を想定して,2トルク制御入力による人工衛星の姿勢安定化手法が考案されている.人工衛星が非対称剛体とみなせれる場合,3軸回りの運動は連成していて,お互い独立していないので,2軸回りのトルク入力でも3軸回りの姿勢制御が可能であることが知られている.本研究では,アクチュエータの故障に加えて,センサも故障した場合を想定して,システムの状態が部分的に不可観測という前提のもと,人工衛星の回転運動を安定化させる手法を考案することを目的とする.この目的のため,本研究では,システムの状態推定手法を考案し,その推定値に基づく2トルク制御測が有効であることを確認する.

題目:不確定外乱に対する適応モデル予測制御に基づく航空機の水平面内誘導制御

研究目的:近年における航空機の事故原因の一つとして,パイロットの人為的ミスがあげられる.そこで,パイロットの負担を軽減するための技術として,自動誘導制御技術の開発が進められている.先行研究では,航空機の水平面内誘導制御問題に対して,最適フィードバック制御手法の一つである非線形モデル予測制御(NMPC: Nonlinear Model Predictive Control)による制御手法が提案され,その有効性が確認されている.しかし,先行研究では,気流の変動によって生じる不確定な外乱の影響が考慮されていない.先行研究の提案手法を不確定な外乱が発生している状況下で適用すると,著しい制御性能の劣化が懸念される.本研究では,不確定外乱の影響を考慮した航空機の水平面内誘導制御問題について考察する.先行研究で提案されているNMPCと未知パラメータをオンラインで推定する適応制御手法を組み合わせた制御手法を考案し,その有効性を数値シミュレーションにより確認することを目的とする.

題目:非定常熱伝導解析による耐熱断熱材を用いたドローンの耐熱性能評価

研究目的:近年,ドローンの活用用途は拡大傾向にあり,物資運搬,インフラ点検,農業,測量,空撮など,様々な用途での活用が期待されている.このような期待の高まりには,先進国を中心とする少子高齢化社会における労働力不足の解消,作業の効率化や人件費の削減といった社会的背景が起因している.さらに,災害現場のような危険な環境において,人では困難な作業をドローンが代わりに行うことへの期待も高まっており,さまざまな研究開発が行われている. ドローンが災害環境で活躍するための研究として,ドローンに搭載されたカメラ映像から自律的に状況を判断するための機械学習に関する研究や,目標軌道を自律的に飛行するための制御系設計に関する研究などが行われている.しかしながら,火災現場のような高温環境下での活用を想定したドローンの耐熱性能に関する研究では,多くの課題が残されている.先行研究では,ドローンが消火ガス噴出用ホースの先端部を運搬しながら,火災建物に侵入し,そのホースの先端部を火災建物の内部に放置するというミッションを想定して,耐熱保護を施した樹脂製ドローンの耐火実験による耐熱寿命の性能評価が行われている.その実験結果では,耐熱保護によりドローン機体の温度上昇が抑えられる効果を確認することができたが,ドローンの耐熱寿命に関しては十分な成果は得られなかった.そこで,本研究では,ドローンの素材を樹脂から金属に変更して,ドローンの耐熱寿命の性能改善について検討する.一般的に,金属は樹脂に比べて重いのでドローンの運動性能を著しく低下させる恐れがある.そのため,本研究では,軽金属であるアルミニウム合金(A5056)とマグネシウム合金(AZ31)に着目した.本研究では,これらの金属を用いた場合,ドローンの耐熱寿命がどれほど改善されるのかを,非定常熱伝導解析によって定量的に評価することを目的とする.

題目:縮小写像法に基づく非線形モデル予測制御と状態推定を用いた車両の走行安定化

研究目的:近年,走行車両の自動運転技術への関心が高まっており,自動走行システムの制御系設計に関する様々な研究が行われている.先行研究では,走行車両が衝突などの事故により不安定走行に陥った場合を想定し,2次事故を回避するための走行安定化問題に対して,縮小写像(CM: Contraction Mapping)法に基づく非線形モデル予測制御による走行安定化手法が提案されている.しかしながら,先行研究の提案手法では,システムのすべての状態変数が既知,つまり,すべての状態が観測可能であると仮定されている.一方で,システムの状態を観測するセンサが故障した場合や,コスト削減のために実装されるセンサが削減された場合を想定して,部分的な状態変数のみが観測可能であるという前提のもと,不可観測な状態を推定するために,無香カルマンフィルタ(UKF: Unscented Kalman Filter)に基づく状態推定手法が既に考案されている.本研究では,先行研究で提案された非線形モデル予測制御手法とUKFに基づく状態推定手法を組み合わせた制御手法を考案し,数値シミュレーションにより,その有効性を確認することを目的とする.

題目:複数特徴量を用いたニューラルネットワークによる機械学習に基づく悲鳴検知の識別精度評価

研究目的:機械学習を用いた音声認識の研究分野において,悲鳴検知に関する研究が行われている.機械学習とは,コンピュータが与えられたデータをもとに反復的に学習し,データに潜むパターンや特性を学習結果として構築するためのアルゴリズムである.悲鳴検知システムは,防犯カメラを設置することのできないトイレやロッカールームなどのプライバシー空間において,犯罪の早期発見や犯罪抑止力としての効果が期待されている.先行研究では,音源からメル周波数ケプストラム係数(MFCC: Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)と呼ばれる特徴量を抽出し,ニューラルネットワーク(NN: Neural Network)やサポートベクターマシーン(SVM: Support Vector Machine)を用いた機械学習による悲鳴検知手法が考案され,その有効性が確認されている.しかし,ある音声クラスに対して,識別精度が低下する傾向があるという課題が残されていた.本研究では,音声から抽出する特徴量として,MFCCに2乗平均平方根(RMS: Root Mean Square)を加えて,複数特徴量を用いた機械学習による悲鳴検知手法を考案し,その有効性を確認することを目的とする.

題目:粒子画像流速測定による流体粘性に起因する回転流れ場の特性変化の解析

研究目的:容器中の液体に回転の流れ場を発生させる技術は,洗濯機や攪拌機など,さまざまな用途で応用されている.本研究では,容器を回転させることにより,容器内の液体に回転の流れ場を発生させるという技術に着目する.先行研究では,粒子画像流速測定(PIV: Particle Imaging Velocimetry)を用いて,容器内の回転流れ場の特性解析が行われている.PIVは,流体中に目印となる微粒子(トレーサー)を混入させ,流体運動を可視化し,画像処理技術により微粒子の動きを追跡することにより,流体の速度場の計測を行う技術である.先行研究では,容器の形状と回転速度,さらに容器内の水位の違いに起因する流れ場の変化が考察されている.そこで,本研究では,容器の回転速度,回転容器の形状,容器内の水位の違いに加え,流体の粘性の違いに起因する回転流れ場の特性変化について考察することを目的とする.

題目:ガス料金の実時間価格制による複数地域のガスタンクの圧力制御

研究目的:近年,枯渇性エネルギー資源を有効活用するために,電力産業の規制緩和および電力市場の自由化への傾向が世界的に活発化している.日本国内においてもその傾向が顕著に現れ始めている.電力と同様に,ガスについても,規制緩和及び自由化が進められている.それに伴い,ガス供給システムの運営や管理に関して様々な検討が必要になる.一例として,実時間価格制度が挙げられる.実時間価格制度は変動料金制度の一つで,価格が時々刻々と変動する料金体系の中で,変動間隔が比較的短いものの総称である.先行研究では,モデル予測制御に基づいた実時間価格制度による電力系統の負荷周波数制御手法が提案され,その有効性が確認されている.本研究では,実時間価格制度によるガス系統のシステムモデルに対する非線形モデル予測制御を提案し,数値シミュレーションによりその有効性を確認することを目的とする.

題目:ニューラルネットワークを用いた機械学習に基づく画像認識による踏切内の障害物検知

研究目的:踏切内に停留した自動車などの障害物と列車が衝突する事故を避けるため,様々な種類の障害物検知システムが検討されている.近年では,カメラ画像から障害物を検知する方式が注目されている.先行研究では,画像から抽出した特徴量をサポートベクターマシン(SVM)による機械学習で用いることによって,踏切内の障害物を認識するための分類器を構築する手法が考案されている.本研究では,SVMの代わりにニューラルネットワーク(NN)と呼ばれる機械学習法を用いた場合,障害物の識別精度が向上するのかを確認することを目的とする.