卒論一覧(2023)

題目:クアッドコプタの非線形系モデルに対するUnscented Kalman Filterを用いた状態推定

研究目的:近年,クアッドコプタは測量や農業などで活躍されており,その応用範囲は拡大傾向にある.一方で,クアッドコプタによる墜落事故や衝突事故などが増加しており,その主因としてセンサの故障によりクアッドコプタの状態を正確に観測できないことが挙げられる.一部のシステムの状態が観測されない場合において,カルマンフィルタを適用した状態推定オブザーバに基づく推定手法が有効であることが知られている.先行研究では,一部の状態が観測されない航空機を想定し,状態を推定する手法としてUKF (Unscented Kalman Filter)を用いた状態推定オブザーバが提案され,その有効性が確認されている.そこで,本研究では,一部の状態が観測できないクアッドコプタに対して,UKFに基づく状態推定法を考案し,数値シミュレーションにより提案手法の有効性を確認することを目的とする.

題目:Fine-tuning を用いた畳み込みニューラルネットワークによる悲鳴検知

研究目的:近年,スマートフォンの普及により,音声認識機能を使用したデバイスが身近なものとなっている.機械学習による音声認識技術が確立されており,字幕作成や翻訳などの様々な分野で活用されている.機械学習を用いた音声認識の研究として,公共空間の安心および安全を目的とした,事故や事件に関わる音を用いた異常検知が挙げられる.悲鳴検知システムは,防犯カメラを設置することの困難なプライバシー空間において,犯罪の早期発見や抑制力としての効果が期待されている.先行研究では,CNN を用いた悲鳴検知手法が考案されその有効性が確認されている.音源からメル周波数ケプストラム係数(MFCC : Mel-Frequency CepstrumCoefficients)と呼ばれる特徴量の抽出が行われている.さらに,抽出されたMFCC を画像データに変換し,CNN を用いて画像の特徴量を抽出することで高い識別精度を発揮することが確認されている.しかし,先行研究では,屋内のみを想定した環境雑音が用いられており,屋外の環境が考慮されていなかった.一方,先行研究では,Fine-tuning を用いたCNN による画像のパターン認識問題が検証され,識別精度および汎化性能の向上が確認されている.以上の背景より,本研究では,先行研究で用いられた環境雑音のデータに加え,新たに屋外環境を想定した雑音を用いることによる汎用性の向上を目的とする.さらに,本研究では,Fine-tuning を用いたCNN に基づく悲鳴検知手法を考案し,その有効性を確認する.

題目:劣駆動船舶の軌道追従に対する非線形モデル予測制御

研究目的:船舶の事故の主な原因として,人為的ミスによる衝突や乗揚げが挙げられる.そこで,人為的ミスによる事故を減少させるために,船舶の自動運航技術の開発が注目されている.先行研究では,平面内における船体位置制御問題に対して,最適フィードバック制御手法の一つである非線形モデル予測制御(NMPC: Nonlinear Model Predictive Control)に基づく制御手法が提案され,その有効性が確認されている.先行研究では,船体に作用する左右方向の制御入力がある場合を想定し,制御系設計が行われていた.しかし、船体を横移動させるサイドスラスタのような動力装置がない船舶に対しては,先行研究[1]の制御手法の適用が困難であると考えられる.そこで,本研究では,船体に作用する左右方向の制御入力がない船舶の非線形システムモデルに対して,NMPCに基づく制御系設計法を考案し,数値シミュレーションによりその有効性を確認することを目的とする.

題目:電力ネットワークに対するUnscented Kalman Filter を用いた状態推定

研究目的:近年, エネルギー資源の有効活用のために, 電力産業の規制緩和および電力市場の自由化への傾向が世界的に活発化している. 先行研究では,電力ネットワークの各地域の状態がすべて観測可能であるという仮定が置かれていた.そのため,計測機器の故障等により,一部の状態が計測不可になった場合,先行研究の手法を適用するには状態を推定する必要がある. 一部の状態が不可観測な場合, ノイズが付加された際においても非線形状態モデルの状態推定が可能であるUKF (Unscented Kalman Filter)に基づく状態推定オブザーバが挙げられる. そこで本研究では, 一部の状態が観測できない場合における電力ネットワークに対して, UKFに基づく状態推定オブザーバを用いた状態推定法を提案する. また, 数値シミュレーションにより提案手法の有効性を確認することを目的とする.


題目:ランダムディザリングを用いた人工衛星の姿勢安定化における確率共鳴

研究目的:近年,ランダムノイズを人為的に付加することにより,量子化誤差の悪影響を低減させるランダムディザリングと呼ばれる手法が注目されている.先行研究では,人工衛星の姿勢安定化制御問題に対してランダムディザリングが適用され,その有効性が確認されている.本研究では,付加するノイズ強度を調整することにより,ランダムディザリングを用いた人工衛星の姿勢安定化制御性能が最適化されるという確率共鳴現象の有無を確認することを目的とする. 


題目:MFCCの画像化による特徴量抽出に基づくCNNを用いた感情推定

研究目的:近年,音声認識の分野において,機械学習を用いた感情推定に対する関心が高まっている.機械学習とは,データ分析の手法の一つであり,与えられたデータをコンピュータが自動で解析し,中にある規則性を発見する技術である.機械学習を用いた音声に基づく感情推定は,会話やインタビューでの話し手の感情を定量的に評価できることから,感情の理解や,感情表現が苦手な人に対する補助など様々な分野での活用が期待されている.このような背景のもと,先行研究では,音声データからメル周波数ケプストラム係数(MFCC: Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)と呼ばれる特徴量を抽出し,機械学習の一つであるLSTM(Long Short-Term Memory)を用いて感情を推定する手法が提案されている.先行研究では,MFCCとLSTMに基づく感情推定手法の有効性が確認されているが,感情の推定精度のさらなる向上が今後の課題として残されている.一方で,先行研究では音声データから抽出したMFCCを画像化し,畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network)を用いてパターン認識することにより,識別精度が改善される場合があることが確認されている.そこで,本研究では,音声データから抽出したMFCCを画像化し, CNNを用いて識別を行うことで感情推定の精度を向上させることを目的とする.