卒論一覧(2022)

題目:畳み込みニューラルネットワークを用いた特徴量抽出に基づく機械学習による悲鳴検知

研究目的:近年, スマートフォンの普及により,音声認識機能を使用したデバイスやサービスが身近なものとなっている. 音声認識には, 機械学習が用いられることが多く, 字幕作成や翻訳などの様々な分野で活用されている. 機械学習を用いた音声認識の研究として, 公共空間の安心, 安全を目的として, 事故や事件に関わる音を用いて異常を検知する研究が多く行われている. 異常音を検知する研究の一つに悲鳴検知システムが挙げられる. 悲鳴検知システムは, 防犯カメラを設置することが困難なプライバシー空間において, 犯罪の早期発見や抑止力としての効果が期待されている.先行研究では,音源からメル周波数ケプストラム係数 (MFCC:Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)と呼ばれる特徴量を抽出し, ニューラルネットワーク(NN:Neural Network)を用いた機械学習に基づく悲鳴検知手法が考案され, その有効性が確認されている. また, 他の先行研究では,音源の特徴を画像で表現し, 畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network) による特徴量抽出を行うことで, 高い性能を発揮することが確認されている.以上の背景より, 本研究では, 音源をMFCCの特徴量を表す画像に変換し, CNNを用いた特徴量抽出に基づくNNによる悲鳴検知手法を考案し, その有効性を確認することを目的とする.

題目:非線形モデル予測制御による質量変化を考慮した再使用ロケットの着陸誘導制御

研究目的:近年,人工衛星を活用した事業が拡大しており,公企業だけでなく,民間企業による人工衛星の打ち上げが多数計画されている.それに伴い,人工衛星を安価に打ち上げることを可能にするロケットの重要性が高まっている.通常,ロケットは一度使用されると廃棄されるため,1回の打ち上げごとに新規のロケットを製作する必要がある.そこで,コスト低減のため,複数回の打ち上げを可能とする再使用ロケットへの関心が高まっている.再使用可能なロケットを確立するためには,機体を目標地点に軟着陸させるための誘導制御技術の開発が必要であると考えられる.そこで,先行研究では,二次元平面内における垂直離着陸型ロケットの着陸誘導制御問題に対して,最適フィードバック制御手法のひとつであるモデル予測制御に基づく制御手法が提案されている.先行研究では,垂直離着陸型ロケットの線形システムモデルに対する制御系設計が行われている.しかし,一般にロケットには,質量変化や空力特性の変化などの非線形の要素が含まれている.そのため,線形化されたシステム方程式に対する制御系設計では,制御性能が劣化する恐れがある.そこで,本研究では,非線形システムモデルで表される垂直離着陸型ロケットに対して,非線形モデル予測制御(NMPC: Nonlinear Model Predictive Control)に基づく制御系設計法を考案する.また,数値シミュレーションにより,その有効性を確認することを目的とする.

題目:省燃費を考慮した自動追い越し走行に対する非線形モデル予測制御

研究目的:自動車に関する死亡事故の原因は,97%がヒューマンエラーに起因することが知られている.そこで,人為的な事故の発生率を低減させるため,自動運転技術の開発が注目されている.先行研究では,周囲の自動車の位置情報を考慮しながらレーンチェンジを行う車両制御問題に対して,モデル予測制御手法が提案され,その有効性が確認されている.また,省燃費を考慮した自動運転技術を確立することが期待されている.そこで,先行研究では,道路勾配に適応した省燃費走行を目的とした制御系設計問題に対して,モデル予測制御手法が提案され,その有効性が確認されている.そこで,本研究では,自動車の省燃費走行を考慮しながら前方車の追い越しを行う車両制御問題に対して,モデル予測制御に基づく制御系設計法を考案することを目的とする.また,数値シミュレーションにより,提案手法の有効性を示す.

題目:ResNet18を用いた画像認識による見守りのための開・閉眼の識別

研究目的:近年,日本は少子高齢化に伴い,介護職員や医療従事者の人手不足が問題となっている.特に,被介護者の見守りには多くの人手が必用とされる.そこで,全国の介護現場や病院では,介護職員や医療従事者の負担を軽減する方策として,カメラを用いた画像認識による見守りシステムが注目されている.介護や医療の現場で必要とされている被介護者の見守りシステムは,介護者の呼びかけや光などの刺激に対して,開眼するか否かを判別することが求められている.このような背景から,先行研究では,カメラを用いて睡眠時以外の被介護者を見守り,開・閉眼の状態を識別することで,意識障害の有無を検知することを目的とした研究が行われている. CNN(畳み込みニューラルネットワーク) の1種であるVGG16を用いてファインチューニングを行うことで,開・閉眼を識別する手法が提案され,その有効性が確認されている.しかし,正面を向いていない顔の検出が考慮されていないことや,介護現場や病院での実用化のためには識別精度の改善が必要といった課題が残されている.機械学習で用いられるCNNとして,VGG16以外のCNN を用いることで識別精度が向上する可能性があると考えられる.そこで,本研究では,様々な角度から撮影された顔のデータセットを用いて,VGG16に加え,ResNet18と呼ばれるCNNを用いて開・閉眼の識別器を構築し,各々の識別精度を比較することを目的とする.

題目:断熱塗料を塗装したプロペラを用いたカーボン製ドローンの耐熱性能の評価実験

研究目的:近年,人の立ち入りが困難な災害現場で人に変わって救助活動を行う災害対応ロボットの活用が期待されている.その中でも,ビルやマンションの高層階で発生した火災現場では,地上を走行するロボットを投入することと比較して,ドローンを活用する方が現場への到達時間を短縮することが可能である.よって,災害対応ロボットとしてドローンが注目されている.一方で,火災現場でのドローンの活用には,耐熱性能において課題が残されている.このような背景から,ドローンの耐熱性能を向上させることを目的とした研究が行なわれている.先行研究では,大型水平加熱炉を用いて火災環境を模擬した高温下で,断熱保護を施したカーボン製のドローンの耐熱実験が行なわれている.先行研究では,カーボン製ドローンを使用し,断熱保護を施したことによって,フレームの熱変形が抑止されたことが確認されている.しかし,モータとプロペラの断熱保護が不十分であったため,これらの耐熱保護について課題が残されている.そこで,本研究では,モータとカーボン製プロペラに断熱保護を施したカーボン製ドローンを用いて耐熱実験を行うことにより,ドローンの耐熱性能を評価することを目的とする.


題目:画像の二値化における平均画素値に基づく閾値設定に対する確率共鳴の性能評価

研究目的:工学分野では,AD変換やネットワーク通信を介した情報伝達を行う際,信号の量子化が行われる.量子化を行うと, 信号の連続値が離散値に近似されることで誤差が発生し, 情報の劣化が懸念される. 近年,ノイズを付加して量子化を行うことにより, 量子化誤差による情報劣化を低減させる手法が着目されている. これは確率共鳴と呼ばれる現象のひとつとして知られている. 適切な強度のノイズを付加することによって, 量子化前後の相関関係を最大化させることが可能になる. 確率共鳴の原理を制御工学に応用した研究では,線形システムの量子化状態フィードバック制御系に確率共鳴が適用され,その有効性が確認されている. また, 音信号の量子化に適用した研究では,ある音信号に対して一様分布のノイズを付加することで,量子化誤差を低減できることが確認されている.画像に関しても量子化を行う際に情報劣化が懸念されている. 一方, 画像の量子化においても, 同様の確率共鳴現象が発生することが知られているが, 閾値の設定に関しては十分な検討がされていない. そこで, 本研究では画像の二値化における確率共鳴現象に着目し, 適切な閾値を設定することで, 確率共鳴現象がより顕著に現れることを確認する.


題目:状態推定オブザーバを用いた非線形モデル予測制御に基づく航空機の水平面内誘導制御

研究目的:航空機の事故の主な原因として,パイロットの操作ミスが挙げられる.そこで,パイロットの負担を軽減し人為的ミスを減少させるために,自動飛行制御技術の開発が注目されている.先行研究では,航空機の水平面内誘導制御に対して,最適フィードバック制御手法のひとつである非線形モデル予測制御(NMPC: Nonlinear Model Predictive Control)に基づく制御手法が提案され,シミュレーションによりその有効性が確認されている.また,先行研究1)では,航空機のすべての状態が観測できない場合を想定して,観測されていない状態を推定することでモデル予測制御を実行している.システムの状態を推定する手法として,カルマンフィルタに基づく状態推定法が挙げられる.非線形システムに対してカルマンフィルタをオブザーバモデルに適用することで,センサ出力から観測できない状態を推定することができると考えられる.非線形システムに対するカルマンフィルタとして,EKF(Extended Kalman Filter)やUKF(Unscented Kalman Filter)が挙げられる.EKFは先行研究で用いられている手法である.しかし,EKFは非線形システムを各時刻で線形近似するため,推定精度の劣化が懸念される.一方で,UKFは,線形近似を行わずに,標準偏差に対応するサンプル点を少数個選び,確率分布を近似する.そのため,UKFはEKFと比較して非線形性の強いシステムに対して推定精度が高いという利点がある.以上の背景より,本研究では,状態がすべて観測できない場合における航空機の水平面内誘導制御問題に対して,UKFに基づく状態推定オブザーバと非線形モデル予測制御を併用した制御系設計を行う.また,数値シミュレーションにより提案手法の有効性を確認することを目的とする.

題目:4自由度の油圧ショベルに対する油圧操作に基づく安定化制御

研究目的:近年,日本国内における建設業界の労働者不足が深刻な課題となっている.そこで,油圧ショベルを始め建設機械の自動制御技術の開発が注目されている.先行研究では,油圧ショベルの軌道生成や軌道追従問題に対して,最適フィードバック制御手法の一つである非線形モデル予測制御に基づく制御手法が提案され,その有効性が確認されている.ただし,先行研究では,油圧ショベルがトルク入力により動作するものと仮定されている.本来,油圧ショベルは,油圧を変化させることで操作されている.そのため,油圧を制御入力とした制御系設計を行うことが望ましいと考えられる.また,先行研究で用いられたモデル予測制御は,システム応答特性の最適化が可能であるが,閉ループシステムの安定性は理論的に保証されていない.そこで,本研究では,トルク入力ではなく油圧を制御入力とした油圧ショベルを制御対象とし,閉ループシステムの安定性を理論的に保証することが可能なリアプノフの安定化制御則を考案する.また,数値シミュレーションにより,その有効性を確認することを目的とする.