卒論一覧(2018)
題目:五角形車輪を有する移動ロボットの耐熱特性の解析
研究目的:近年, 地震などの災害から, 被災者の救助活動や2次災害の防止を目的とした災害対応ロボットの研究開発が進められている. しかしながら, その大半はいかにして災害現場のような不整地をロボットが移動できるかに研究の焦点があてられており, 火災現場で発生する高熱の問題に対処できるロボットの研究開発成果は十分に得られていない.先行研究では,アルミ箱にモータ駆動部を附属させたロボットに対して,耐熱断熱材による耐火保護を施し, その耐火性能が評価されている. しかしながら,先行研究の耐火実験では,モータに対してロボット走行時に発生するトルク負荷はかけられておらず,無負荷でのモータの耐熱寿命のみが検証されていた.今後は,モータに車輪を取り付けて,実際にロボットを走行させ,負荷を加えながら,ロボット駆動部の耐熱寿命を検証する必要がある.本研究では,その耐熱実験の準備として,製作した耐熱走行ロボットの熱解析を行い,駆動車輪部の耐熱特性を解析することを目的とする.
題目:雨天を考慮した鉄道車両の滑走防止ブレーキに対する非線形切替制御
研究目的:鉄道車両の走行において,強いブレーキ力が働いた際に,ブレーキ力が車輪レール間の粘着力を上回り滑走が発生することがある.特に,雨天時には粘着力が小さくなるため,滑走が発生しやすいと考えられる.滑走が発生するとブレーキ距離の延伸や,車輪路面の損傷を引き起こす可能性がある.滑走が発生した場合,ブレーキ力を一時的に下げることで再び粘着状態に回復させる方法が対策として考えられる.先行研究では,鉄道車両の滑走防止ブレーキを目的としたリアプノフ制御に基づく非線形切替制御系が考案されている.しかしながら,文献[1]では,晴天という状況下のみ考慮されており,より滑走が生じやすくなる雨天の状況は考慮されていなかった.そこで,本研究では,雨天時を考慮した鉄道車両の滑走防止ブレーキに対する非線形切替制御手法を考案することを目的とする.そして,数値シミュレーションにより提案手法の有効性を確認する.
題目:機械学習に基づく画像識別による点字ブロックの検知
研究目的:点字ブロックとは,街中や駅といった様々な場所で,視覚障害者を安全に誘導するために,地面や床面に敷設されている,表面に突起があるブロックのことであり,視覚障害者誘導用ブロックと呼ばれることもある.一般的に,視覚障害者は,杖などを用いて触感覚により,点字ブロックを認識している.ゆえに,視覚障害者にとって,円滑に点字ブロックを認識するためには,十分な経験が必要とされると考えられる.本研究では,視覚障害者が点字ブロックを検知するための負担を軽減化させることを目的として,機械学習に基づく画像識別法により,点字ブロックを検知するシステムを考案することを目的とする.先行研究では,画像から黄色成分を検出して,点字ブロックを検知するシステムが考案されている.一方で,本研究では,画像からSURFと呼ばれる特徴量を検出して点字ブロックを識別する方法とHOGと呼ばれる特徴量を検出して点字ブロックを識別する方法を考案し,各々の識別精度の比較結果を示す.
題目:自動走行車両に対するUnscented Kalman Filterに基づく状態推定
研究目的:近年,走行車両の自動運転技術の進展への期待が高まっている.それにともない,自動走行車両の制御系設計に関するさまざまな研究が行われている.先行研究では,走行車両が衝突事故等により不安定走行状態に陥った場合,自動走行により,走行を安定化させるための制御手法が考案されている.しかしながら,先行研究では,走行車両システムのすべての状態変数が観測可能であると仮定されていた.走行車両の位置,速度,回転角速度すべてを観測するセンサ系を実装するには,コスト面で実用的ではないと考えられる.そこで,本研究では,先行研究の走行車両システムモデルに対して,部分的な状態変数の観測と観測ノイズの影響を考慮したシステムの状態推定法を考案することを目的とする.Unscented Kalman Filterに基づく状態推定法を考案し,数値シミュレーションによりその有効性を確認する.
題目:不確実なシステムパラメータに対する水中ロボットの回転運動のロバスト安定化
研究目的:近年,海洋探査や災害時の水中調査など,さまざまな目的に応じて,水中内で作業するロボットの研究開発が期待されている.先行研究では,低速航行用水中ロボットのモデリングおよび制御系設計の研究が行われている.しかしながら,先行研究で用いられていたシステムモデルでは,システムパラメータが既知であり,モデル化誤差が存在しないものと仮定されていた.また,システムの状態はすべて正確に観測可能であるものと仮定されていた.本研究では,システムモデルに対してモデル化誤差が含まれていた場合と,観測した状態に観測ノイズが含まれていた場合を想定して,それらの不確定誤差や外乱に対して,水中ロボットの姿勢をロバスト安定化させる手法を考案し,数値シミュレーションにより,その有効性を確認する.
題目:音信号の量子化における確率共鳴のケプストラム距離に基づく性能評価
研究目的:工学分野において,しばしば信号の量子化が行われる.例えば,AD変換やネットワーク通信を介した情報伝達などにおいて,信号が量子化される.例えば,ネットワークの通信情報量が極端に制限される場合,低分解能の量子化を行う必要があり,情報の劣化が懸念される.近年,人工的にランダムノイズを付加して量子化を行うことにより,量子化誤差の悪影響を低減させる手法が着目されている.これは確率共鳴と呼ばれる現象のひとつとして考えられる.適切な強度のノイズを付加することによって,ある信号の量子化前と後の相関関係を最大化させることにより,量子化による情報劣化の悪影響を軽減化できる.先行研究では,線形システムの量子化状態フィードバック制御系に当該手法が適用され,その有効性が確認されている.そこでは,量子化幅と同じ区間をもつ一様分布のノイズを加えることで制御性能が向上することが示されている.本研究では,先行研究の制御系の入出力信号とは異なり,音信号の低分解能量子化に着目して,先行研究と同様にして,確率共鳴による入出力信号の相関が最大化される現象が生じるかどうかを確認することを目的とする.
題目:機械学習に基づく音声認識を用いた人物認識の精度評価
研究目的:音声認識の研究では,音声データからメル周波数ケプストラム係数(MFCC)と呼ばれる特徴量を摘出し,サポートベクターマシン(SVM)と呼ばれる機械学習に基づいて分類器が作成される方法が考案されている.一般に,1フレームの音声データから抽出されるMFCCは13次元の特徴量データとなっており,この特徴量が機械学習における学習用データとして用いられる.本研究では,音声を用いて人物の認識を行うパターン認識技術の開発を目的とする.本人の音声と非本人の音声を判別することができる技術は,セキュリティ認証など,さまざまな場面での応用が期待できる.本研究では,MFCC特徴量に基づく,人物識別法を考案し,音声データから切り取るフレーム数とフレーム長が,識別精度に与える影響を評価することを目的とする.
題目:粒子画像流速測定による回転方向と容器形状に起因する流れ場の解析
研究目的:ある容器を回転させることにより,容器中の液体に回転の流れ場を発生させる技術は,洗濯機や攪拌機などさまざまな分野で応用されている.容器形状や回転速度の変化によって,容器内の流体で発生する回転の流れ場がどのようにして変化するのかを調べることによって得られた知見は,洗濯機や攪拌機のような応用技術の進展にとって有用であると考えられる.上記のような研究背景に動機づけられて,先行研究では,回転速度と容器形状,さらに,容器内の水位の違いによる流れ場の変化が考察されている.しかしながら,先行研究では,回転方向は1方向に固定されており,回転が正転と逆転と変化した場合に生じる流れ場の変化については検証されていない.したがって,本研究では,回転方向を正転から逆転に変化させた際に,容器形状や回転速度によって流れ場の変化がどのように異なるのかを検証することを目的とする.本研究では,先行研究と同様に,流れ場の測定方法として粒子画像流速測定法(PIV: Particle Imaging Velocimetry)を採用する.PIVでは,流体中に目印となる微粒子(トレーサー)を混入させて流体運動を可視化し,その微粒子の動きをデジタル画像処理で追跡することにより,流体の速度場の計算が可能になる.
題目:階段昇降ロボットの移動特性と振動特性に及ぼす車輪材質の影響
研究目的:自然災害は避けることのできない脅威であり,その被害を最小限にとどめるための対策が期待されている.近年,災害が発生した際に,人命救助や調査等を行うロボットの研究開発が注目されている.そのようなロボットに要求されている特徴の1つが不整地を移動できることである.先行研究では,五角形車輪を有する不整地走行ロボットが開発されている.五角形の車輪を複数個連結させて走行する機構が用いられており,不整地における走破性の性能向上を実現している.さらに,車輪材質が走行特性に及ぼす影響が考察されている.しかしながら,先行研究では,整地,不整地,坂道における走行特性が考察されているが,階段における走行特性の検証は行われていない.したがって,本研究では,五角形車輪型走行ロボットの車輪材質がアルミとウレタンでの走行時の移動速度ならびに振動特性が整地,不整地,坂道および階段で各々どのように変化するかを明らかにすることを目的とする.
題目:回転磁場による磁性液滴の特性変化の考察
研究目的:磁性流体とは,磁性と流動特性をもつ流体である.磁性流体は,磁場下で多様な流動の特性や,スパイク現象など特徴的な形態変化を示すことが知られている.工学,医学などの応用分野で,磁性流体の特性を生かした新たな技術を開発しようとする動きが活発化している.上記背景に動機づけられて,先行研究では,磁性流体の液滴を所望の位置に移動させるための制御技術が考案され,その有効性を確認するための実験装置が開発されている.さらに,パルス幅変調(PWM)制御を適用することにより,電磁コイルへの印加電圧の立ち上がり時間を調整し,その立ち上がり時間と,磁性液滴の限界移動速度との関係が明らかにされている.このように,磁性流体の基礎的な特性を明らかにすることは,工学応用の観点から,有意義であると考えられる.本研究では, 磁性流体の基礎的な特性を調査することを目的として,回転磁場が磁性液滴の温度や流動特性にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とする.
題目:機械学習に基づく画像認識を用いた雨天時を考慮した踏切内の障害物検知
研究目的:踏切内で自動車や人が列車と衝突する事故を避けるため,踏切内の障害物を自動検知するためのシステム開発が期待されている.過去に,赤外線や超音波を利用した障害物の検知法が考案されたり,金属体によるインダクタンス変化を利用した検出法が考案されたりしている.赤外線や超音波に基づく手法では,列車が舞い上げた埃等による誤検知といった問題があり,インダクタンス変化に基づく手法では,検知対象が限定的といった問題が考えられる.上記背景を踏まえて,近年,カメラ画像から障害物を検知する方法が提案されている.学習用画像データからSURFと呼ばれる特徴量を抽出し,Bag of Visual Words(BoVW)と呼ばれる手法を用いて,画像の識別器を構成することによって,踏切内の障害物を検知する方法が考案されている.ただし,先行研究では,晴天のみの画像が評価対象となっており,雨天時における識別精度の悪影響については考察されていなかった.本研究では,晴天だけでなく雨天時の画像を用いて,学習およびその識別精度の評価を行うことを目的とする.さらに,先行研究では,SURFという特徴量のみ用いられていたが,本研究では,SURFに加えてKAZEとBRISKと呼ばれる特徴量を用いて,各々の識別精度の優劣を比較することを目的とする.