2019年度 卒業研究紹介


小笠原 実頼
題目:鉄道車両の滑走防止ブレーキに対する状態推定を用いた非線形切替制御
研究目的:鉄道車両が急ブレーキにより緊急減速する際,制輪子を押し付けることによって発生するブレーキ力が,車輪とレールの間の粘着力より大きくなり,車輪滑走がしばしば発生する.先行研究では,ブレーキによって発生する粘着力のスリップ特性の非線形性に着目し,それらを考慮した鉄道車両の滑走防止ブレーキに対する非線形切替制御手法がリアプノフ制御手法に基づいて考案されている.しかし,先行研究では,制御系設計においてシステムの状態変数がすべて既知であると仮定されている.実用上では,センサによってシステムの状態は観測されるため,センサが故障した場合や観測ノイズの影響により,すべての状態変数が正確に測定できない場合が考えられる.そこで,本研究では,一部の状態変数のみが観測できる場合と観測ノイズが測定信号に含まれる場合を考慮した制御系設計問題を考える.制御工学の分野において,センサノイズと呼ばれる観測雑音が出力信号に含まれる場合,部分的な状態変数のみが観測可能という条件のもと,システムの全状態変数を推定する手法として,カルマンフィルタに基づく状態推定手法がよく知られている.そこで,本研究では,非線形システムに適用可能なカルマンフィルタとして知られるEKF(Extended Kalman Filter)に着目し,先行研究の非線形切替制御手法とEKFに基づく状態推定手法を組み合わせた制御系設計手法を考案し,その有効性を数値シミュレーションにより確認する.


木下 裕太
題目:背景差分法を用いた機械学習に基づく画像認識による踏切内の障害物検知
研究目的:踏切内で自動車または人と列車が衝突する事故を避けるため,踏切内の障害物を自動検知するためのシステム開発が期待されている.これまでに,赤外線光線を遮断することで物体を検知する光電方式や,金属体によるインダクタンス変化を利用したループコイル方式が考案されている.しかし,列車が舞い上げた埃等による誤検知や,検知対象が金属体のみに限定されているといった問題がある.そのため,近年ではカメラ画像から障害物を検知する方法が着目されている.上記背景を踏まえて,先行研究では,単眼カメラの画像からSURF (Speeded Up robust Features) 特徴量を抽出し,Bag of Visual Words (BoVW) と呼ばれる手法を用いて画像の識別器を構成し,踏切内の障害物を検知する手法が考案されている.しかし,SURF特徴量を抽出する際,画像におけるキーポイントの検出が,障害物ではなく背景に偏ることにより誤認識が起こる問題がある.本研究では,背景差分法と呼ばれる手法を用いることにより,障害物以外の背景画像部分の情報量を減らすことに着目した.情報量を減らした画像から特徴量を抽出する提案手法と従来手法の比較を,識別精度と画像処理時間の観点から行い,各々評価することを目的とする.


溝川 佳英
題目:ニューラルネットワークを用いた機械学習による悲鳴検知の識別精度の評価
研究目的:音声認識の研究分野では,悲鳴を検知する研究が行われている.悲鳴検知システムは,防犯カメラを設置することのできない,トイレやロッカールームなどのプライバシー空間において,犯罪早期発見や犯罪抑止力としての効果が期待されている.先行研究では,音源からメル周波数ケプストラム係数(MFCC: Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)と呼ばれる特徴量を抽出し,サポートベクターマシン(SVM: Support Vector Machine)を用いた機械学習によって悲鳴検知を行う方法が考案され,その有効性が確認されている.しかし,先行研究では悲鳴以外の音データとして,人の笑い声や泣き声など悲鳴に類似した音声データは用いられておらず,悲鳴の判定精度の考察に関して課題が残されていた.パターン認識における他の機械学習法として,ニューラルネットワーク(NN: Neural Network)がある.NNは,学習データのクラスタリングにおいて,線形分離が困難な場合においても,高い識別精度を発揮することが可能な手法として知られている.本研究では,新たな悲鳴検知法として,NNを用いた機械学習による悲鳴検知法を考案することを目的とする.


南山 智紀
題目:超小型人工衛星の非定常熱伝導解析に基づく機器配置設計
研究目的:近年,人工衛星の小型化,低コスト化が進み,様々な大学や企業などで人工衛星の開発が盛んに行われている.人工衛星にはバッテリ,通信機器,オンボードコンピュータなどが搭載されており,そのような機器には許容温度がある.その許容範囲が大きい機器でも\pm50℃程度である.この範囲を越えてしまうと機器が故障する恐れがある.しかし,宇宙空間では±100℃程度の温度変化が想定されるため,衛星内部の温度変化を抑えるための熱設計をする必要がある.先行研究では,地球観測衛星や月・惑星探査機といった大型衛星を対象とした熱設計に関する報告がまとめられている.しかし,ヒートパイプやヒートシンクなどの大きな装置を用いた熱設計が行われているため,スペースが限られている超小型人工衛星には適用できない.本研究では,CubeSatと呼ばれる超小型人工衛星を対象として,太陽の輻射熱による外的温度変化とバッテリの自己発熱を考慮した非定常熱伝導解析を行う.スペーサの材質やバッテリの位置など機器配置の違いが及ぼす衛星内部の温度変化への影響を確認し,熱設計の設計指針を得ることを目的とする.


村田 英聴
題目:耐熱断熱材を用いたドローンの耐火性能の評価
研究目的:近年,害獣対策や宅配サービス,インフラ設備の点検など様々な場面でのドローンの活用が期待されている.このようなドローンへの期待の高まりには,先進国を中心とする少子高齢化社会における労働力不足の解消,作業の効率化や人件費の削減といった背景がある.ドローンに関する研究では,3次元測量やインフラ点検,農業や漁場探索におけるリモートセンシング,高所危険作業への応用などドローンの飛行能力を活かした研究が行われている.災害現場での活用を想定したドローンの研究では,要救助者の探索や被災状況の調査などカメラを用いた画像認識に関する研究に焦点が置かれ,大雨や強風,火災現場のような過酷な環境で使用可能なドローンの研究開発は進められていない.本研究では,火災現場でのドローンの活用に着目した.消火ガスを放出するためのホース先端部を,火災現場内部に搬送することを目的とした消火ドローンの開発を目指す.そのため,火災現場外部から内部に侵入するまでにかかる移動時間の飛行寿命を確保することが,耐火性能評価の基準になると考えられる.火災現場の高温に対処できる消火ドローンを開発することにより,高層ビル火災など地上からの消火活動が困難な場合において,迅速かつ安全な消火活動が可能になると考えられる.本研究では,消火ドローンの開発の第一歩として,市販のドローンに対して耐熱保護を施し,耐火実験を行うことで耐熱保護を施したドローンの耐火性能を評価することを目的とする.



本山 一馬
題目:1枚のロータが停止したクアッドコプタの非線形モデル予測制御
研究目的:近年,マルチコプタが急速に普及しており,農薬散布,運送・宅配サービス,建造物の保守点検などのさまざまな分野での活用が期待されている.一方,マルチコプタによる事故が年々増加傾向にあり,マルチコプタの使用に対する安全対策への関心が高まっている. このような背景のもと,マルチコプタの一部のロータが故障した場合における,自動飛行制御系設計に関する研究が注目されている.先行研究では,2枚のロータが停止したヘキサコプタに対する非線形モデル予測制御手法が提案され,その有効性が確認されている.そこで,本研究では,1枚のロータが停止したクアッドコプタに対する非線形モデル予測制御手法を考案し,その有効性を数値シミュレーションにより確認することを目的とする.


山本 貫太
題目:非線形入力特性をもつシステムに対する確率制約付きモデル予測制御
研究目的:制御工学の分野において,不確定変動を有する外乱の影響を考慮した制御系設計問題が重要な課題の一つとして考えられている.近年,不確定外乱を考慮した制約付き最適制御問題が注目され,様々な研究が行われている.不確定外乱を考慮した制約条件は,ハード制約とソフト制約の2種類に大別される.ハード制約とは,必ず満たすべき確定的な制約条件であり,ソフト制約とは,ある一定の確率で満たすべき制約条件である.制約条件を確率的に少し緩和することにより,制御性能が大幅に改善される場合があることが知られている. 先行研究では,線形離散時間システムに対して確率制約付きモデル予測制御問題の解法が考案されている.モデル予測制御とは,最適フィードバック制御手法の一つである.先行研究の手法の適用範囲は線形システムに限定されており,非線形システムには適用できない.本研究では,非線形入力特性を有するシステムを制御対象として,確率制約付きモデル予測制御問題の解法を考案することを目的とする.



吉岡 弘人
題目:縮小写像法に基づく非線形モデル予測制御による2次事故回避のための車両の走行安定化
研究目的:モデル予測制御とは,最適フィードバック制御手法の一つである.現時刻から有限時間未来までの評価区間を設定し,時間が進むごとに評価区間を未来へ移動させながら,時々刻々と継続的に最適制御問題を解きながら最適入力を更新することによって,フィードバック制御を行う手法である.非線形システムに適用されるモデル予測制御は非線形モデル予測制御(NMPC: Nonlinear Model Predictive Control)と呼ばれ, NMPCをオンラインで実装するためには,ある一定時間間隔内で最適制御問題を解き,それを繰り返す必要がある. そこで計算処理の高速化が課題となる.近年,NMPC問題の高速数値解法アルゴリズムが構築され,さまざまな制御対象に応用されている.先行研究では,C/GMRES法に基づくNMPCが2次事故回避のための車両走行安定化制御問題に適用され,その有効性が確認されている.一方,別の先行研究では,縮小写像(CM: Contraction Mapping)法と呼ばれるNMPC問題の数値解法アルゴリズムが考案されている.本研究では,CM法に基づくNMPCを2次事故回避の車両走行安定化制御問題に適用し,計算処理時間及び最適性誤差の観点からC/GMRES法の結果と比較することを目的とする.