2016年度 卒業研究紹介

安藤 卓哉
題目:縮小写像法に基づくモデル予測制御による航空機の水平面内誘導
研究目的:モデル予測制御とは,最適フィードバック制御手法の一つである.現時刻から有限時間未来までの評価区間を設定し,時間が進むごとに評価区間を未来へ移動させながら,時々刻々と継続的に最適化問題を解きながら最適入力を更新することによって,フィードバック制御を行う手法である.非線形システムに対して適用されるモデル予測制御は非線形モデル予測制御(NMPC: Nonlinear Model Predictive Control)と呼ばれる.NMPCをオンラインで実装するためには,ある一定時間間隔内で非線形最適化問題を解き,それを逐次繰り返す必要があるため,計算処理の高速化が課題となる.近年,C/GMRES(Continuation/Generalized Minimal Residual)法と呼ばれるNMPC問題の高速数値解法アルゴリズムが,航空機のNMPCに基づいた水平面内誘導制御の実機実験に適用され,その有効性が報告されている.一方で,近年C/GMRES法より高速化が可能な縮小写像(CM: Contraction Mapping)法と呼ばれるNMPC問題の数値解法アルゴリズムが考案されている.本研究では,CM法に基づくNMPCを航空機の水平面内誘導制御問題に適用し,計算時間及び計算精度の観点から双方の結果を比較することを目的とする.

石田 皓祐
題目:粒子画像流速測定による回転と容器形状に起因する流れ場の解析
研究目的:流体工学の分野では,さまざまな対象と目的に応じて,さまざまな流れ場の解析が研究の対象とされている.本研究では,ある容器を回転させることにより,容器中の液体に回転の流れ場が発生するという現象に着目する.容器の形状に応じて,発生する回転の流れ場がどのように変化するのかを測定し,そのデータを解析することによって,容器形状に起因する回転流れ場の発生メカニズムを明らかにすることを目的とする.容器を回転させることによって,容器内の液体に対して,所望の流れ場を発生させる技術は,洗濯機や遠心分離機など,工学のさまざまな分野で応用することが可能であるため,挑戦的で重要な課題の一つであると考えられる.本研究では,流れ場の測定方法として粒子画像流速測定(PIV: Particle Imaging Velocimetry)法を採用する.PIV法は,画像解析技術を利用して,流体の複雑な非定常流れの計測技術として開発された.流体中に目印となる微粒子(トレーサー)を混入させて流体運動を可視化し,その微粒子の動きをデジタル画像処理で追跡することにより,流体の速度場の計算が可能になる.

岡崎 郁弥
題目:消火ロボットの開発に向けた加工金属の耐熱特性評価
研究目的:近年,建築構造の複雑化が進み,いったん火災が発生すると,人間が建物内部に進入し,消火活動を行うことは困難な状況となる場合が多い.このような場合,消火ロボットの利用が望ましい.これまで,災害現場での活用を想定した,さまざまなロボットの研究開発が行われている.しかしながら,その大半では,いかにして災害現場のような不整地をロボットが移動できるかに研究の焦点があてられており,火災現場で発生する高熱の問題に対処できるロボットの研究開発は進んでいない.上記研究背景のもと,本研究では,耐熱特性を有する消火ロボットの開発に向けて,金属の加工方法によって,耐熱特性がどのように変化するのかを明らかにすることを目的とする.

岡田 和真
題目:ランダムディザリングを用いた人工衛星の姿勢安定化
研究目的:工学分野において,しばしば低分解能の量子化の実装が必要になる.例えば,ネットワーク通信における通信量が極端に制限された場合,低分解能の信号の量子化を行う必要がある.しかしながら,低分解能の量子化処理による量子化誤差が引き起こすシステムの性能劣化が懸念される.近年,人工的にランダムノイズを付加して量子化を行うことにより,量子化誤差の悪影響を低減させるランダムディザリングと呼ばれる手法が着目されている.過去の研究では,線形システムの状態フィードバック制御に当該手法が適用され,その有効性が確認されている.しかしながら,非線形システムに対する適用例はこれまでに報告されていない.したがって,本研究では,非線形システムである人工衛星の回転運動に着目し,その姿勢安定化制御問題に対して当該手法を適用し,その有効性を確認することを目的とする.

川島 尚士
題目:悲鳴検知における特徴量の低次元化と識別精度の評価
研究目的:音声認識の研究分野では,悲鳴を検知する手法1)が考えられている.当該手法を活用して,犯罪現場で起こる悲鳴を認識することで犯罪の発生を検知したり,防犯カメラを設置することのできないプライバシー空間での犯罪抑止力としての効果が期待されたりしている.従来の研究では,音声データからメル周波数ケプストラム係数(MFCC)と呼ばれる特徴量を摘出し,サポートベクターマシン(SVM)と呼ばれる機械学習法に基づいて分類器が作成されるというような悲鳴識別法が考案されている.従来の研究では,1フレームの音声データから,各々12次元のMFCC,ΔMFCC,Δ2MFCCからなる36次元の特徴量データが摘出されている.ただし,ΔMFCCはMFCCの差分情報,Δ2MFCCはΔMFCCの差分情報を表している.また,SVMの学習で用いられる学習データは36次元×4フレームであった.これに対する研究として,13次元のMFCCでも悲鳴検知が可能であることを示す研究もある.本研究では,SVMで用いる学習用特徴量データの低次元化を行い,学習データの次元数,フレーム数,識別精度の関係を定量的に評価することを目的とする.

後藤 肇宏
題目:土壌湿度ダイナミクスの計測と数理モデリング
研究目的:近年,専業農家が減少し,兼業農家が増加する傾向にともない,農業の事業形態が多様化しつつある.農業従事者の労働負担を軽減し,農作物の収穫効率を高めるための植物栽培システムを構築することは重要な課題である.本研究では,植物栽培における土壌湿度を所望の状態に自動的に制御するシステムに着目する.当該システムを設計する際,土壌湿度の振る舞いを記述する数理モデルの構築が重要な課題となる.本研究では,家庭菜園用のプランタを用いて,土壌湿度ダイナミクスの測定実験を行い,その測定データを用いて,土壌湿度ダイナミクスの数理モデルを構築することを目的とする.


辻山 卓弥
題目:不整地走行ロボットの走行特性に及ぼす車輪材質の影響
研究目的:近年,さまざまなフィールドで作業を行うことを想定したロボットの研究開発が注目されている.そのようなロボットに対して要求される代表的な特徴が,不整地を移動できることである.凸凹の地面,階段,障害物など通常の車輪走行では移動できない環境下において,所望通り移動することができるロボットの研究開発が盛んにおこなわれている.過去の研究では,災害時の人命救助を支援する目的で,五角形車輪を有する階段昇降ロボットが開発されている.五角形の車輪を複数個連結させて走行する機構が用いられており,不整地における走破性の性能向上を実現している.本研究では,過去の研究と同様に五角形車輪を複数個連結させて走行するロボット機構に着目する.当該ロボットを負傷者や荷物の運搬などの用途で活用する場合,走行時のロボット本体の振動を軽減させることが望まれる.これまでに,車輪素材がアルミの場合とゴムの場合で,走行時の振動特性がどのように変化するかは,当該ロボットに対して調べられていない.したがって,本研究では,五角形車輪型走行ロボットを製作し,車輪材質がアルミとゴムで走行時の振動特性が整地及び不整地で各々どのように変化するのかを明らかにすることを目的とする.

西村 航平
題目:Bag of Visual Wordsに基づく画像識別による踏切内の障害物検知
研究目的:踏切内で自動車または人と列車が衝突する事故を避けるため,踏切内の障害物を自動検知するためのシステム開発が期待されている.これまでに,赤外線光線を遮断することで物体を検知する光電方式と,金属体によるインダクタンス変化を利用したループコイル方式の2種類が実用化されている.しかしながら,光電方式では,列車が舞い上げた埃等による誤検知といった問題があり,ループコイル方式では,金属体の検知のみといった検知対象が限定的という制約がある.上記背景を踏まえて,カメラ画像から障害物を検知する方法が近年着目されている.既に,ステレオカメラを用いて障害物を検知する方法が提案されている.一方,本研究では,単眼カメラの画像から踏切内障害物を検知する手法を考案する.事前に踏切内に障害物がある場合とない場合のサンプル画像を十分用意し,パターン認識法のひとつであるBag of Visual Words(BoVW)と呼ばれる手法を用いて,画像の識別器を構成する.本研究では,BoVWに基づく画像識別法を,踏切内の障害物検知に応用し,その識別精度を評価することを目的とする.

濵本 浩平
題目:磁性液滴のシーケンス制御における特性評価
研究目的:磁性流体とは,磁性と流動特性をもつ液体である.磁性流体は,磁場下で多様な流動の特性や,特徴的な形態変化を示すことが知られている.工学,医学などの応用分野で,磁性流体の特性を生かした新たな技術を開発しようとする動きが活発化している.磁性流体の応用例をいくつか挙げる.磁性流体中に沈んでいるプラスチックなどの非磁性体を外部から磁場を印加することにより流体の液面まで浮かび上がらせることができる.また,磁性流体は主に鉄と油を用いて作成されるので,これに医薬を溶解あるいは混合させることができる.外部からの磁場で磁性流体を制御することにより,医薬を内包した磁性流体を体内で輸送することができる.さらに,印加する磁場の極性を高速に切り替えることで,磁性体微粒子が振動加熱され,その熱により付近の癌細胞を死滅させたりすることができる.本研究では,上で述べたような技術を確立するための第一歩として,磁性流体の液滴を所望の位置に移動させるための制御技術を考案し,その有効性を確認するための実験装置を開発することを目的とする.