2015年度 卒業研究紹介

大江 明歩
題目:植物栽培における土壌湿度のフィードバックオンオフ制御実験
研究目的:近年,専業農家が減少し,兼業農家が増加する傾向にともない,農業の事業形態が多様化しつつある.そのような背景のもと,IT技術を利用した農業工程の自動化技術への注目が高まっている.農業従事者の労働負担を軽減し,農作物の収穫効率を高めるための植物栽培システムを構築することは重要な課題である.本研究では,植物栽培における土壌湿度を所望の状態に自動的に制御するシステムを構築することを目的とする.土壌湿度センサーからの出力信号を用いて,フィードバックオンオフ制御を実装し,実験によりその有効性を確認する.

末松 宏祐
題目:ガス料金の実時間価格制に基づくガスタンクの圧力制御
研究目的:近年,限りあるエネルギー資源を有効活用するために,電力産業の規制緩和および電力市場の自由化への傾向が世界的に活発化しており,日本国内においてもその傾向が顕著に現れ始めている.電力と同様にして,ガスについても,近い将来,規制緩和及び自由化が進められる予定である.それに伴い,ガス供給システムの運営や管理に関して,さまざまな検討が必要になる.本研究では,モデル予測制御と呼ばれる最適フィードバック制御手法を用いて,実時間価格制に基づくガス料金を設定し,社会全体の利益を考慮しながら,ガスタンクの圧力を所望の状態に制御することを目的とする.

杉本 光
題目:台上のボール位置制御に対するランダムディザリングの適用実験
研究目的:工学分野において,しばしば信号の量子化が行われる.例えば,AD変換やネットワーク通信を介した情報伝達などにおいて,信号が量子化される.例えば,ネットワークの通信情報量が極端に制限される場合,低分解能の量子化を行う必要があり,情報の劣化を避けることは難しい.近年,ランダムディザリングと呼ばれる,ランダムノイズを付加してから量子化を行うことにより,量子化誤差の悪影響を低減させる手法が着目されている.倒立振子と呼ばれるメカニカルシステムの制御系設計にランダムディザリングを適用した研究が行われている.本研究では,下図に示されるような台上のボール位置制御システムに対して,ランダムディザリングを適用し,実機実験により,その有効性を確認することを目的とする.

中井 勇貴
題目:音信号の量子化における確率共鳴の性能評価
研究目的:本研究では,AD変換やネットワーク通信における音信号の量子化について着目し,量子化による音質劣化の低減化対策として,確率共鳴の原理を応用した手法を考案することを目的とする.さらに,印加するノイズの強度に関して,ケプストラム距離を尺度とした最適化を行い,定量的な性能評価を行うことを目的とする.

仲尾 柾哉
題目:植物の生育を診断するための画像識別法
研究目的:近年では,顔検出機能や,まばたき検出機能などの画像識別技術が発展しており,スマートフォンやカメラなどに広く普及している.それに伴い,画像識別に関するさまざまな研究が行われている.従来の研究では,植物病害の自動診断のために,分光反射特性と光学フィルター画像を用いた自動診断手法が考案されている.本研究の目的は,特殊な機能を持たない普通のカメラで撮影された一般的な葉の画像を用いた場合でも,植物の健康状態を判定することが可能となるような識別手法を考案することである.

中村 樹
題目:回転と容器形状に起因する流れ場のPIV計測とデータ解析
研究目的:流体工学の分野では,さまざまな対象と目的に応じて,さまざまな流れ場の解析が研究の対象とされている.本研究では,ある容器を回転させることにより,容器中の液体に回転の流れ場が発生するという現象に着目する.容器の形状に応じて,発生する回転の流れ場がどのように変化するのかを測定し,そのデータを解析することによって,容器形状に起因する回転流れ場の発生メカニズムを明らかにすることを目的とする.

中村 智博
題目:磁性液滴の位置決めシーケンス制御実験
研究目的:磁性流体とは,磁性と流動特性をもつ液体である.磁性流体は,磁場下で多様な流動の特性や,特徴的な形態変化を示すことが知られている.工学,医学などの応用分野で,磁性流体の特性を活かした新たな技術を開発しようとする動きが活発化している.磁性流体の活用例をいくつか挙げる.磁性流体中に沈んでいるガラスやアルミニウムなどの非磁性体でできた物体を,外部から磁場を印加することによって,流体の液面まで浮き上がらせることが可能である.外部より磁場で磁性流体を制御することにより,医薬を体内で輸送したり,強磁性体超微粒子を加熱して付近の癌細胞を死滅させたりすることができる可能性がある.本研究では,上で述べた技術を確立するための第一歩として,磁性流体の液滴を所望の位置に移動させるための制御技術を考案し,その有効性を確認するための実験装置を開発することを目的とする.

本郷 宏己
題目:蓄電池を用いたエネルギー管理における確率的制約付き最適制御
研究目的:近年, 再生可能エネルギーと呼ばれる,太陽光, 風力, 水力などの永続的に利用することができるエネルギー源の活用への期待が高まっている.これらの自然エネルギー源による発電出力は天候に大きく左右されるため, 電力系統を安定して運用するためには,蓄電池の導入が必要である. また, 蓄電池の管理に求められる条件は, 不確定外乱の影響のもと,適正動作範囲内で望ましい蓄電レベルを回復・保持することである. モデル予測制御(MPC)とは,最適フィードバック制御手法の1つである.本研究では, 近年注目されている確率的モデル予測制御 (SMPC) と呼ばれる確率的拘束条件付き最適制御手法を,再生可能エネルギーによる不確定外乱のもと電力系統の蓄電量を管理する問題に適用することを目的とする.

三村 篤史
題目:悲鳴認識における摘出特徴量の低次元化
研究目的:近年では,スマートフォンなどの端末に搭載される音声認識システムの技術が発達しており,広く普及している.それに伴い,さまざまな音声認識に関する研究が行われている.昨今,犯罪がより多様化され,それに伴いセキュリティーシステムは洗練されている.典型的なシステムとして防犯カメラがあるが,プライバシーの問題もありトイレや更衣室といった場所に設置することは難しい.そこで本研究では,悲鳴認識によるセキュリティー対策に着目し,悲鳴の検出方法について検討する.従来の研究では,音声からメル周波数ケプストラム係数(MFCC)と呼ばれる特徴量を摘出し,サポートベクターマシン(SVM)と呼ばれる学習法に基づいて悲鳴の認識手法が考案されている.ただし,学習に用いられる特徴量データは36次元×4フレームのMFCCであった.本研究の目的は,摘出される特徴量(MFCC)を,13次元×1フレームのMFCCに低次元化した場合でも,SVMの学習により悲鳴検知が可能であることを示すことである.摘出特徴量を低次元化することによって,セキュリティーシステムに導入さるコンピュータの計算負担が軽減されるという利点が挙げられる.

宮野 恭佑
題目:農耕車両の乗り心地を考慮した最適走行制御
研究目的:近年,車両運転の自動化に関する制御技術の開発が進んでおり,今後も,車両の自動運転制御システムの設計に関して,さまざまな研究が行われると考えられる.このような背景のもと,本研究では,整地されていない凸凹な農耕地を自動走行する農耕車両の制御系設計問題について考える.凸凹な地面を走行するため,走行速度を上げると,地面と垂直方向の車体の揺れが大きくなる.そのため,出発地から目的地まで素早く移動することと,縦揺れを抑えるという2つの目的にはトレードオフの関係がある.本研究では,最適制御手法を用いて,評価関数の重み係数を調整することによって,トレードオフの関係がある2つの目的のどちらをどの程度優先させるかを調整することが可能な制御系を設計することを目的とする.より具体的には,時間が進むごとに評価区間を移動させながら最適制御問題の解を時々刻々と求めることによって,最適フィードバック制御を達成するモデル予測制御と呼ばれる制御則を農耕車両の走行制御に対して考案することを目的とする.